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2019.06.26
この7月で当院は5周年を迎えます。
まだまだ、これから。あらためて襟を正す思いです。
この度、本を出版しました。
今まで患者さんから問いかけられた「体に関する疑問」に関して、深く掘り下げて解説した内容になっています。医療関係者の方でも読み応えのある内容になっていると思います。
さて、人間は何故「記憶」をするのでしょうか?
生物の本能は生き抜くことです。かつ繁殖をし、種を繁栄させ存続させていくことです。加えて、生きるためには危険を回避していかなくてはなりません。
危険な敵、危険な場所、危険な味、危険な臭いなどなど。身の回りのありとあらゆる環境、巡り合う状況に対して、その都度、瞬時に正しい判断をし、行動しなくては淘汰されてしまうでしょう。
そこで学習をします。学習とはつまり経験と記憶です。敵か味方か、危険か安全か、生き残るための判断には過去の記憶から最適解を導きださなくてはなりません。つまり記憶することは、とりわけ重要な本能的行動といえます。
ここに記憶の必要性の原点があると思います。
そんな重要な記憶。人間には記憶回路(海馬―傍海馬領域・大脳辺縁系属)、パペッツ回路や情動記憶-ヤコブレフ回路の存在があります。
記憶と言えば海馬を思い出す方が多いと思います。もう一つ、扁桃体を中心とした情動記憶もかなり重要であることを追記しておきます。扁桃体は快・不快、恐怖の情動を引き起こす部位です。
私たちが感じる恐怖は「私が怖い」と思うからではなく、「扁桃体が働くから怖い」が正しいと言えます。
更に言うなれば、扁桃体のD1受容体(ドーパミン受容体)の数が多い人は恐怖を感じやすいという事が知られています。怖がりな人は性格によるものではなく、受容体の数の影響と言えます。
扁桃体を除去したサルは天敵である蛇に対し「恐怖」を感じず近づいてしまいます(クリューバービューシー症候群)。これでは生きていくことは困難になります。記憶には情動による修飾がとりわけ重要であるというわけです。
「記憶する」ことは「使用される」こととワンセットです。
記憶は使用されることにより重要性を増し、逆に使用されない記憶は消失します。 このように記憶をする、すなわち神経活動がなされたら、なされた分だけ強化され、次回以降も神経活動の痕跡が残ること、これを神経の可塑性と言います。この可塑性は脳が環境の変化に柔軟に対応できる事と、進化の可能性を持っている事を示しています。
脳の重要な性質であり、そしてなんといってもロマンを感じませんか?
加えて、脳は何回も出会う事象よりも、何回も引き出される事象の方が、より記憶として強化される事が知られています(テスティング効果)。アウトプットされた情報をフィードバックすることも記憶が強化される理由といえそうです。
余談ですが、睡眠も記憶強化には不可欠です。ノンレム睡眠はエピソード記憶、レム睡眠は手続的記憶の強化をそれぞれが担っています。ノンレム睡眠(段階4)のデルタ波、レム睡眠のシータ波は記憶の強化に欠かせない脳波です。
徹夜で勉強するより、しっかりと寝て睡眠の記憶の固定作用を利用した方が、成績が上がることも知られています。また、ノンレム睡眠時にはグリンパティックシステム(脳脊髄液による浄化作用)により脳の生理的状態が良くなります。
このことは本書にも記載してありますので興味があれば一読ください。
私の今回の出版も、開院5周年だから、というのは一つの動機付けで(作話?)、どちらかというと脳のテスティング効果に従ったもののような気がします。
どのような経過であれ、記憶したものを「脳はアウトプットしたがる」です。
こちらの方が上梓の理由として適当なのかもしれません。
まだまだ語りたいのですが、すでにお気づきのように理屈好きの私が書いた本です(笑)。院内にも置いてありますので、気が向いたら手に取ってみて下さい。お待ち時間の時間つぶしの一助になれば幸いです。更に購入して頂けたらより幸いです(笑)。